認知症は生活習慣病か?
認知症の原因となる病気には多くのものがありますが、特に多いのが脳血管性認知症とアルツハイマー型認知症です。この二つとその混合型(二つを合併している型)を合わせると、認知症全体の8割から9割を占めると考えられています。脳血管性認知症とは、脳梗塞(脳の血管に血栓という血の固まりがつまった状態)、脳出血(脳の血管が破れて出血した状態)など脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるものです。一方、アルツハイマー型認知症(Alzheimer Disease;以下AD)は、脳の細胞が変性(性状、性質が変わる)したり、消失した結果、脳が縮んで認知症になるものです。
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●高血圧と認知症
スウェーデンの大学は、70歳の時には認知症の認められなかった382名を、その後最長15年間追跡し、79−85歳までの間にADを発症した者の70歳の時点における高血圧との関連を調査しました。その結果、ADを発症した者は、有意に高血圧の罹患が多いことが明らかとなった。大学は、高血圧は頭蓋内穿通枝動脈を引き起こし、大脳白質病変を形成することで認知症の発症を早めていると推測しています。日本の研究者も同様に佐賀県での住民調査においてMRIを用い、高血圧と大脳白質病変との関連を指摘しています。
最近、東北大学は、過去に東北大学病院で高血圧治療を受けた4124人の高血圧患者を調査し、服用した薬とAD発症との関連を検討しました。その結果、約8年の間に105名の患者がADの診断を受けました。その中で、脳に移行する高血圧の薬を服用している患者は、脳に移行しない薬を服用している患者にくらべて、ADの発症が4分の1に抑えられたという驚くべき結果を報告したのです。
●糖尿病と認知症
ある研究では、糖尿病患者692名を含む6370名の地域住民を平均2年追跡した結果、AD89名を含む126名の認知症患者が確認されました。糖尿病であることは、正常者にくらべて脳血管性認知症のみならず、ADの発症リスクも上げていることが確認され、特にインスリン治療を受けている糖尿病患者では、AD発症のリスクは約4倍に上昇していたというものです。糖尿病は、糖質の利用障害が中核である疾患であるが、神経細胞が糖の利用障害に陥った結果、神経細胞死がもたらされ、ADを発症すると考える研究者もいます。
●コレステロールと認知症
2000年の研究では、コレステロールを下げる薬(スタチン系薬剤)を服用している、高脂血症患者からのADの発症が有意に低いことを報告しています。また、別の研究では、ADの遺伝子改変マウスモデルにおいて、高コレステロール食の負荷はアミロイド蛋白の蓄積を促進させることを報告しており、スタチン系薬剤による高コレステロール血症治療の理論的な根拠となりました。
●運動と認知症
ある研究では、運動可能な71−93歳のハワイ在住の日系アメリカ人男性2257名を対象として、1日当たりの運動距離と5年後の認知症発症の関連を調査しました。追跡期間中に158名の認知症患者が確認されました。年齢補正後も、歩行最小群(1日当たり0.4km未満)では、1日当たり3.2km超群に比して約1.8倍認知症の発症リスクが高かったことを報告しており、活発な生活習慣の促進が認知機能の維持に有効である可能性を示唆しています。
●アルコールと認知症
ある研究では、アルコールと認知症の関連を疫学調査で明らかにしています。認知症でない地域在住の55歳以上の住民5395名を平均6年間追跡し、197名の認知症患者を確認しました。認知症の内訳は、AD146名、脳血管性認知症29名、その他22名でした。まったくアルコールを飲用しない人にくらべて軽度から中等度(1−3杯)のアルコールを飲用する人の相対危険度は0.6と有意に低下していたといいます。また、この認知症抑制効果は、アルコールの種類には関係がなかったといいます。
●まとめ
認知症は20−30年間、掛かって発症します。がんよりも長い時間が発病に必要ということなのです。これは、何を意味しているのでしょうか。また、このような長い潜伏期間の間、脳では何が起こっているのだろうか? ここで生活習慣病を取り上げた理由がまさにここにあるのです。このような長い時間をかけて脳をダメにしていくものとして最も考えられるからです。しかし,生活習慣と神経細胞死の関連はまさにこれからの研究課題でもあるのです。(週刊医学界新聞 第2664号 2006年1月2日「MCI(mild cognitive impairment;軽度認知機能障害)の概念と認知症予防としての生活習慣病対策が持つ可能性」荒井啓行・古川勝敏(東北大学先進漢方治療医学))
【スポンサード リンク】2006年01月01日 21:42



